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コロナ禍での汗 兵庫県  山﨑撃

随筆/雑記

 わが家の地続きの土地に2階建ての大きな古民家が建っていた。その土地が売りに出された。「地続き
は借金しても手に入れよ!」との格言を信じ、借金を重ねて手に入れた。数年後、阪神淡路大震災で被
災された神戸のTさん夫妻と娘さん一家が同居し、総勢9名の大所帯が7年余り住まわれ、古民家も大い
に役にたった。その後10年ぐらいの間、数人の家族が住んでくれ随分と役に立ったが、空き家になって
数年が経つと瓦がずり落ち板塀が外れてくるなど、年々荒廃が気になってきた。台風が来て瓦などが飛
び散ると周りの家に迷惑を掛けることになるので、思い切って取り壊すことにした。

 更地になった土地は思っていた以上に大きく、街なら駐車場にも出来るのだが・・? 売るに売れない田舎の更地。どうしたものかと考えた末「柿の木のある家に住みたい」子どもの頃の夢を叶えたい。いっそう果樹園にしたらとの思いが湧いて、息子に果樹園にしたい夢を語ると、「ええやん!好きにしたら・・。」と拍子抜けの返事が返ってきた。「よっしゃ!」走り出したら止まらない性格。この播州の地に合う果樹は?ウオーキングがてらに果物を植えてある家を見て廻った。新種の甘柿、干し柿用の渋柿、梅やレモンなどの柑橘類。秋口に植穴を掘る作業に取り掛かった。
 スコップがガツン! つるはしの先にガーンと石の音。更地の下は石ころや瓦礫が一面に敷き詰められていた。ここ掘れワンワンは金銀財宝だが、ここ掘れゲキサンは石ころに瓦礫屑。「これが銭なら」と。ぶつぶつ言いながら、毎日一個を目安に8個の植穴を掘った。掘り出した石や瓦礫は境界線近くに穴を掘り埋め戻す。ステイに行く前にと新年早々苗木を買い求めた。ホームセンターで買った苗木は2,3年物の心細い苗木であったが、我が懐に合った価格であった。

 一カ月のステイを終え帰宅すると、更地一面に小さな冬の雑草がびっしりと生えていた。世の中、コロナ騒動が起こり学校は休校、職場はリモート、会食は駄目。不安な日々が増していく。一人で時間を潰す時が長く、更地部分の石拾いや雑草抜きが日課になった。心臓や肺に持病を抱えているうえ、後期高齢者の私には若い頃の体力がないが、先の見えぬコロナ禍では自由な時間が有り過ぎる程ある。長期戦を覚悟して新たな石拾いと瓦礫拾いが始まった。30分も作業をすると疲れが出て来る。無理をせずに家に帰って休む。この繰り返しで一日に2,3時間外での作業を続けている。拾っても拾っても石ころは出てくる。雑草も四季に合わせて生えてくる。土を触る仕事は本当に重労働で汗まみれになる。家に籠って15年。会社勤めの時は脇の下で毎日のように汗を掻いたが。定年後の今、小さな菜園で毎日いい汗を掻いている。

編集担当 高田幸夫

随筆/雑記

コメント

  1. 堀口昌之助 より:

    ええお話を聞かせていただいた。あなた様の生活が垣間見れて、大震災も関り、この土地はあなたの人生の一部でしたね。大事に使い、次に引き継いでいただければなおさらです。
    こっちは土地を持たないアパート暮らし、気楽ではありますが、土地との関わりはありません。

  2. 宗村新一郎 より:

    撃さんがここ暫く成りをひそめていた理由が分かりました。
    撃さんの汗に答えて野菜も立派に育っていますね、柿が実のったら教えて下さい。

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