安達太良SA
SAに「ほんとの空の里」という案内板が建っている。
「智恵子は東京に空がないと言ふ、ほんとの空が見たいと言ふ。智恵子は遠くを見ながら言ふ。阿多多羅山の上に毎日出てゐる青い空が智恵子のほんとの空だといふ。あどけない空の話である。」(智恵子抄より)
この日、空はどんよりしていた。ほんとの空はどこにあったのだろうか?
ぼくは、雲に霞んでいる安達太良山を見つめた。智恵子と光太郎の仲は決して幸福ではなかったといわれている。でも、それは他人にはわからないことだ。
高村光太郎記念館で僕は「レモン哀歌」の朗読を聴いた
「そんなにもあなたはレモンを待つてゐたかなしく白くあかるい死の床でわたしの手からとつた一つのレモンをあなたのきれいな歯ががりりと噛んだトパアズいろの香気が立つその数滴の天のものなるレモンの汁はぱつとあなたの意識を正常に …」
光太郎にとって智恵子は「ほんとの女性」だった。それだけは理解できた。