十河和夫記
サメット島の玄関口であるナダン港に着くと、巨大な鬼女像ピースアサムットが出迎えてくれる。女神のようにも見えるが、海に住む鬼らしい。波止場の玄関には笛を吹く王子の像があり、向き合っているように作られている。この笛を吹く王子が島のいたる所にあるので、何者だろうかと調べてみた。すると、驚くべき物語があったのだ!


この王子の名前はプラアパイマニー、この像はタイのあちこちにあるそうで、すべてこの笛を吹く姿で作られているようだ。この王子の物語が「プラアパイマニー」で、ラーマ二世時代の詩人スントーンプーが描いた作品だ。
プラアパイマニー王子と弟のシースワン王子は、15才と13才のとき修行の旅に出て、プラアパイマニーは笛を学んで名手となる。プラアパイマニーはあまりにも美しく笛を吹くことができるようになったので、聴いているひとは自分以外みんな眠ってしまうというほどだった。眠ってしまったら、笛の音が聞こえなくなっちゃうがと、ついつっこみを入れたくなる。が、それだけうっとりする音だったのだろう。
ある日海辺で笛を吹いていると、その美しい音色に、海の底に住む巨大な「雌夜叉(ピースワン)」がさそわれて出てきて、若く美しい王子を見て、夫にほしいと思う。この鬼夜叉が先ほど港で見た像だ。
ほかの家来や弟は眠りこんでいるので、なんなくさらって海の底に連れていって、美しい女性の姿に変身して、一生懸命つくした。まあ、仕方がないなと僕は思う。美しい女性の姿に変身までして尽くしたのだから、まあ、事情はどうであれピースワンは男に尽くす女だったのだろう。プラアパイマニーもいたしかたないので、そこで暮らし、二人の間には、シンサムットという子どもが生まれた。やっぱりそうか、男はスケベーだからな。


ある日、プラアパイマニーは人魚の老夫婦の助けを得られることを知って、シンサムットとともに鬼夜叉のもとを脱出する。何があったのだ!
鬼夜叉は必死で追いかけるが、息子シンサムットも母にそむいて父を助け、二人は逃げることができたが、人魚の老夫婦は鬼夜叉に食べられて犠牲になってしまう。やはり鬼は恐ろしいということか!
プラアパイマニーはたどりついた島で、さまざまな言語を学んだり出家して修行したりする。その島がサメット島ということか。

島にいる間は仙人の結界があるので鬼夜叉は手出しできないが、プラアパイマニーはその島から帰国することにして船を出した。待ってましたと、鬼夜叉があらわれるが、なんとかプラアパイマニイーは山の上にのがれる。鬼夜叉はおりてくるように懇願するが、プラアパイマニーは笛を出して吹く。

鬼夜叉は笛の音を聴くともだえ苦しみ、のたうちまわって死んでしまう。可哀想に、そこまでしなくてもと思うのは僕だけだろうか?プラアパイマニーも何年も夫婦として暮らし、息子までなした鬼夜叉の最後に複雑な気もちになって涙したと、物語には書かれている。が言い訳みたいだ!涙涙涙涙






