日本の紅葉と信濃路
日本の紅葉の魅力は色彩の豊かさにある。モミジ、カエデ、イチョウ、ナナカマドなど多様な樹木が共存することで、赤、黄、橙、緑のグラデーションが生まれる。これは世界的にも珍しい。標高差によって紅葉の時期や色付き方が異なり、長期にわたって楽しめる。
中でも信州は南北に長く、標高差が大きいため、今頃から11月下旬にかけて紅葉が楽しめる。これからは三段紅葉(常緑樹の「緑」、中腹の紅葉の「赤や黄」、そして、山頂の初冠雪の「白」)は見事である。
二千メートル級の山は既に紅葉は見ごろである。これから11月に掛けて信濃路は紅葉の見ごろな時期になる。
私たち夫婦は昨年の10月半ば朝早く大阪を出発し7日間の「紅葉の信濃路」の旅に出かけた。


(注意)
文中に、「信州紅葉の旅」の短い動画(2~3.5分)が6作品挿入されています。画像の中の▷マークをクリックすると動き出します。スマホの場合は横長にしてご覧ください。また、右下の□をクリックすると画面全体に拡大してご覧いただけます。
A.木曽御嶽エリア
初日: 木曽御嶽登山
御岳ロープウエイの乗り場の駐車場には既に何台かの車が止まっていた。ロープウエイに乗り込むと眼下に色とりどりの紅葉が広がりまるで紅葉の空を散歩しているような気がした。
藤森高原駅に着くと空気が一段と澄んでいて風が優しく頬を撫でる。昼には少し早いがベンチに腰を下ろし持参したおにぎりを広げた。遠くに広がる紅葉の絨毯を見ながら食べるおにぎりは格別である。


いよいよ御嶽山を目指して登山道へ。道中、木漏れ日が紅葉を透かして黄金色に輝く、すれ違う人々と「こんにちは」「いい天気ですね」の言葉を交わしながらゆっくり歩を進める。


女人堂に着くと、そこには多くの登山客が集まり、にぎやかである。それぞれが秋を満喫していた。しかし、空模様は次第に変わり始めた。麓では快晴だったが白い霧に覆われ視界が徐々に狭まっていく。御岳山もまるで霧のベールに包まれるように静かに姿を消していった。「もう少し上まで行きたかったな」名残惜しさも感じながら下山を決意した。

下の映像は「錦の木曽御岳山(3.5分)登山」の様子を動画の映像にまとめたものです。BGMにはフォーク調の素敵な音楽を入れています。僅かの時間ですのでご覧ください。
2日目: 開田高原ハイキング
御嶽山から下山後、車で開田高原に向かった。山道を走ると夕暮れの光が紅葉を照らしまるで金色のカーテンの中を走るようであった。宿に着いたのは夕方。標高1200mにある宿は木々に囲まれ部屋の窓から木曽御嶽山がくっきり見える。宿の女将さんは「今日は空気が澄んでいるからくっきり見えますよ」と微笑みながら教えてくれた。この開田高原で2連泊した。自家製の無農薬野菜を使った料理や飛騨牛のすき焼きなど、秋の味覚の創作料理を楽しんだ。


翌朝、窓を開けると御嶽山の稜線が朝日に照らされくっきりと見える。早々に朝食を取り終えてホテルの自然いっぱいの庭を散策。紅葉の始まった木々が風に揺れ、小鳥のさえずりが聞こえる。ゆっくり歩いていると木製のブランコがある。乗るとギシギシ音を立てる。童心に帰ったような気になり思わず微笑む。


この日は開田高原をハイキングして一日を過ごした。森林をくぐったり、川のせせらぎを聞いたりして歩いた。途中、木曽駒(馬)の牧場に立ち寄った。木曽駒は足が短く農耕や荷運び用としてよく働く。馬を世話していた男性が「この子は二十歳。人懐っこくてね」と語る表情が印象に残っている。


下の映像は「開田高原の秋(2.5分)登山」の様子を動画の映像にまとめたものです。BGMにはフォーク調の素敵な音楽を入れています。僅かの時間ですのでご覧ください。
B.安曇野エリア
3日目: 鳥川渓谷歩き
開田高原での2連泊をを終えると安曇野エリアへ移動した。安曇野エリアの初日は鳥川渓谷の水エリアへ。駐車場に着くと何と野生のサルたちが出迎えてくれた。道路を渡ってこちらをじーっと見つめる姿に、思わず「こんにちわ」と声をかける。


渓流の流れに沿って散策した。苔生すあずまやひっそりと佇み、時の流れを忘れさせる。途中見つけた「人面岩」は、まるで誰かが笑っているような表情で、思わずシャッターを押した。この地方の方が「昔から”見守り岩”って呼ばれてるんですよ」と教えてくれた。この日からホテル・アンビエント安曇野で2連泊した。
4日目: 安曇野清流の里サイクリング
翌日は安曇野の清流をサイクリングで巡った。道の両側には黄金色の稲穂と紅葉が広がり、まるで絵本の中を旅しているようであった。「大王わさび農場」ではワサビ田が広がり、清流の中で水車が静かに回っていた。


昼食のレストランでは、生わさびをおろして、蕎麦つゆに入れると、ツンとくる辛さの中にワサビの香りが広がり、思わず「これ最高!」と声をかけた。ワサビビールも絶妙の味がして美味しかった。


この日は、道端に佇む道祖神、吉丸一昌の早春賦歌碑を回り、最後は穂高神社をお参りして締めくくった。

下の映像は「秋を彩る安曇野(3.5分)」の様子を動画の映像にまとめたものです。BGMにはフォーク調の素敵な音楽を入れています。僅かの時間ですのでご覧ください。
5日目: アートな安曇野ドライブ
今日は「アートな安曇野を満喫しよう!」と車に乗り込み南から北へドライブした。目指すは、国営アルプス安曇野公園の二つのエリアだ。
まず訪れたのは堀板・穂高地区。ここは「田園文化ゾーン」と「里山文化ソーン」があり四季折々の花々と懐かしい日本の原風景が広がる。ちょうど「秋・コスモスの花フェスタ」の真っ最中であった。園内の掃除婦の方が「この辺りは春は菜の花、夏はひまわり。秋はコスモスと、季節ごとに景色が変わるんですよ」と教えてくれた。


次に車で30分ほど離れた大町・松川地区。こちらは253haもある広大な敷地を誇り、まさに「森で遊ぶ」がテーマのエリアだ。「空中回廊」では地上9mの高さから森を見下ろしながら560m歩く。木々の間を風が吹き抜け、まるで鳥になったような気分だ。園内にはアスレチックや渓流遊びのエリアもあり子供たちも多く見かけた。


その後碌山美術館、ちひろ美術館などを回り、ドライブの締めくくりは大町市の鷹狩山展望台へ。車で山を登ると、そこには大町市を一望できる絶景が広がっていた。「ここからの眺めは最高でしょ?」とカメラを構える男性が話しかけてくれた。この日は自然と人のぬくもりに包まれた一日だった。

下の映像は「アートな安曇野(3.5分)」の様子を動画の映像にまとめたものです。BGMにはフォーク調の素敵な音楽を入れています。僅かの時間ですのでご覧ください。
C.白馬エリア
6日目: 雨紅葉の栂池自然園トレッキング
安曇野エリアから白馬エリア移動。白馬ハイランドホテルで2連泊した。このエリアの初日は生憎の雨模様であった。スタッフの方が「雨の日の紅葉も、しっとりとして綺麗ですよ」優しく元気づけてくれた。
予定通り標高1900mにある栂池自然園へ。ロープウエイとゴンドラを乗り継いで霧に包まれた高原に向かう。窓の外には、雨で濡れて艶やかに輝く紅葉が広がり水彩画のようである。


自然園に着くと整備された木道をゆっくり歩き始めた。見どころの一つである浮島湿原では小さな島が水面に浮かび、霧の中に幻想的な風景が広がる。さらに進んた先の展望湿原では、本来ならば白馬三山が目前に見えるはずであったが、霧が濃く姿が見えなかった。「三山は見えないけど山が呼吸しているみたいに感じますね」とすれ違った登山客が言った言葉が心に残った。


自然は見えるものだけではなく、感じるものでもあるあるのだと気づかされた。その後足元に気を付けながら幻想的な霧の中を自然の音や匂いを感じながら楽しんだ。

下の映像は「雨紅葉の栂池自然園(2.5分)」の様子を動画の映像にまとめたものです。BGMにはフォーク調の素敵な音楽を入れています。僅かの時間ですのでご覧ください。
7日目: 晴れ紅葉の絶景テラス「白馬岩岳マウンテンフィールド」
白馬ハイランドホテルの2日目の朝は、まさに「打って変わって」の快晴。昨日雲に隠れていた白馬三山が青空にくっきり見えた。「今日は最高の紅葉日和!」とホテルのスタッフが笑顔で声を掛けてくれた。その言葉に押されるようにして白馬岩岳絶景テラスへと向かった。


ロープウエイに乗って標高1289mの山頂へ。目の前に広がるのは、まさに”山の遊園地”。自然の中に溶け込むように設置されたアクティビティが、訪れる人を笑顔にする。
まず向かったのは話題の白馬マウンテンパーク。白馬三山が真正面に広がり、その雄大な姿に思わず「わぁ…」と声が漏れる。地元の女性は「この景色は何度見ても飽きないんですよ」と話してくれた。


今回の目玉は何といってもヤッホー・スイング。巨大な木製ブランコに夫婦で乗り勢いよく漕ぎだすと目の前の白馬三山に投げ出されるような感じになる。まるで鳥になって空を飛んでるような感覚に包まれた。思い切って「ヤッホー!」と叫ぶと風に乗って山々に響いていくようだった。


その後、グリーンパークのテラスへ。椅子に腰かけて眼下に広がる白馬の紅葉をゆっくりと眺める。隣に座っていた男性が「昔は冬のスキーだけだったが、今は一年中楽しめるオールシーズン型リゾートになった」と教えてくれた。
自然の美しさや地元の人々の温かさに包まれて忘れられない信濃路の紅葉となった。

下の映像は「晴れ紅葉の白馬高原(2分)」の様子を動画の映像にまとめたものです。BGMにはフォーク調の素敵な音楽を入れています。僅かの時間ですのでご覧ください。

「紅葉の信濃路」を楽しんで頂けましたでしょうか。信濃路の紅葉は、これから11月下旬ごろまで楽しめます。是非、グループで、ご家族で訪ねてみてください。
私たち夫婦の今年の紅葉は、飛騨高山や奥飛騨温泉郷を訪ねてみようと思っています。
編集担当:高田幸夫




